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【フェス飯の鉄人】 ARABAKI/炭火で鶏を焼いて40年。福島で暮らしていた時代に思いを込めて炭火に向かう。「オルガン/風琴」

2024.03.19
【フェス飯の鉄人】 ARABAKI/炭火で鶏を焼いて40年。福島で暮らしていた時代に思いを込めて炭火に向かう。「オルガン/風琴」
   ダクトから鶏が焼けるいい匂いと煙が漂ってくる。強烈に食欲が刺激される。考えてみれば、野外フェスのブースで、街中の飲食店で見かけるようなダクトを見ることはあまりない。オルガン/風琴は2008年にアラバキフェスに初出店した。

「フェスに初出店したのは、2007年のフジロックでした。音楽が好きでフェスには遊びに行ってたんです。でもそこで食べたご飯があまり美味しくなかったという思い出があって。屋外でもフェスの現場でも、炭火で焼いた美味しいものを食べてもらいたい。そんな気持ちで出店したんですよ。最初はとにかく大変でした(笑)。フェスでのノウハウがまったくなかったんで、煙が本当にすごくて」とオルガン/風琴の野田清太郎さん。

 アラバキへの出店がきっかけのひとつだったのか、東京にあったお店を福島県の浜通りに移転。そして移転の翌年に東日本大震災が起こった。お店があったのは福島第一原発から7キロの距離の帰宅困難区域だ。

「2008年にアラバキに出たときは土砂降りの雨だったんですよね。翌年は出店せずに、2010年に会場が風の草原エリアにも広がるということで、どんな雰囲気になるのかって見にきたんです。この風の草原エリアへの出店なら、山も見えるしまた出たいって思って。そしたら翌年に東日本大震災があって。やっとアラバキに戻ってこられたのが、確か2015年でした」と野田さんは話を続けた。

 現在は岐阜の里山に土地を買い、そこで食を中心とした新たなコミュニティを構築しているという。

「アラバキで出店を続けているのは、出店するのが磐越という場所というのも大きな理由のひとつです。福島のことを思い出しながら出られる場所って、アラバキのここしかないんです。キャンプサイトには、毎年参加しているっていうお客さんも多い。『毎年買ってます』って寄ってくれるお客さんもいて。僕のなかでは、数万人を集める大型のロックフェスではアラバキが一番だと思っています。ラインナップと景観とお客さん。お客さんの顔が見えるっていうのかな。お客さんともいいエネルギーの交換ができていて、そうすると僕らももっと美味しいものを出したいっていう気持ちになるんです。充実感っていうか満足感っていうか、そんな気持ちに一番なれるのがアラバキなんです」

 オルガン/風琴が変わらずにこだわっているのが、炭火による焼きと秘伝のタレだ。野田さんは「焼き場」歴が、なんと40年近くになるという。

「炭火ってやっぱり難しいんです。特にフェスのような現場では。火加減が調節できないじゃないですか。天候でももちろん左右されるし。でも焼いている鶏を持っただけで焼き具合がどうなっているかわかるんです。焼き鳥だったら串を持てばわかる。その感覚的なものって音楽を演奏するのに近いんですよ。フェスでの僕らの一番の報酬ってお客さんの笑顔。自分たちの感覚と共有できる人たちといい輪ができたらいいなって思って焼いています」

 炭火を使って焼かれた「美味しい」は、笑顔をもたらしてくれる。食べることもフェスの大きな楽しみのひとつであることをオルガン/風琴のメニューは教えてくれる。





<text・photo=菊地 崇>



ARABAKI ROCK FEST.24
日時:2024年4月27日(土)〜28日(日)
会場:みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
https://arabaki.com/
 
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん
菊地 崇 a.k.a.フェスおじさん

ライター、編集者、DJ。フェス、オーガニック、アウトドアといったカウンターカルチャーを起因とする文化をこよなく愛する。 フェスおじさんの愛称でも親しまれている。

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