佐渡島の南西に位置する小木。ここでアース・セレブレーションがスタートしたのが1988年。毎年旧盆が終わった後の8月の週末に開催され、今年で38回目を迎えた。日本でもっとも歴史のある音楽フェスのひとつと言えるだろう。太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能を現代に再創造を試みる太鼓芸能集団「鼓童」が地元・佐渡市とともに開催している祭り。1988年以来、鼓童は小木を活動の拠点に世界を巡っている。その世界ツアーで鼓童の太鼓に出会い、そして導かれたのか、開催当初から多くの外国人がアース・セレブレーションを体験するために佐渡にわたってきたという。インバウンドという言葉がない時代の古い写真を見ると、ヒッピー風の外国人も多かったようだ。その自由な空気感は今も残っている。

かつては緑に囲まれた城山公園でメインコンサートが行われていたが、10年ほど前から小木みなと公園がメイン会場となっている。そのハーバーコンサートとハーバーマーケットがあるみなと公園近くがブルーエリア、フリンジと呼ばれる入場無料のフリーライブなどが行われる三角公園や小木の古い町並みが残る商店街エリアをイエローエリア、現在はキャンプサイトとなっている城山公園がグリーンエリア。コンサートやマーケットとともに、小木という重要伝統的建造物群保存地区に選定された小木の町全体が、アース・セレブレーションの会場として構成されている。

ハーバーマーケットも無料エリア。お客さんだけではなく、アース・セレブレーションに魅せられ、毎年のように続けて出店しているお店も多いという。ハーバーコンサートは毎日夕方18時から。それまではフリンジに行ったり、マーケットを覗いたり、町を歩いたり。このゆっくりした時間も、他のフェスにはないアース・セレブレーションの魅力なのだろう。フェス飯も、何を食べたいのかゆっくり選ぶことができた。

馬川亭×佐渡総合高校STACH
愛の佐渡タコス(ポーク)1,000円

ハーバーマーケットのフードエリアを歩いて、「これを最初に食べなきゃ」と思ったのがここ。看板から「愛」が伝わってくる。しかも実際に作っているのが佐渡の高校生たち。タコスの味がどうこうというよりも、夏を楽しみながら頑張ってタコスを作って売っている高校生たちの笑顔が見たかったのが、このタコスを選んだ大きな理由だ。

タコス生地は、ソフトでもハードでもなく、鉄板で自分たちで焼いもの。ひとつひとつが不恰好でちょっと硬めのものあるけれど、それがいい意味での忘れられないポイントでもある。サルサソースがもうちょっときいていた方が好みだったけど、佐渡の思い出としては最高の味との出会いだった。
caMococafé湖ASOBi
佐渡さーもんの塩レモンぱすた 1,000円

前に取材に行ったときに、佐渡の新しいブランド魚に「佐渡サーモン」があるということを知った。佐渡沖で養殖される国産のギンザケ(銀鮭)で、日本海の速くて深い潮流の中で鍛えられることによって引き締目られた身質と上品な脂が特徴だという。佐渡サーモンの旬は4月から6月まで刺身としても美味しく味わえるという。このお店では冷凍保存していると話してくれた。

佐渡とはいえ、残暑が厳しく日中の最高気温は35度近くまでなった。その暑さのなかで、「佐渡の美味しいを食べたい」と思って選んだのが、ここの塩レモンぱすた。佐渡サーモンは確かに柔らかくて、ほろほろとした食感だった。それを塩とレモンがさっぱりと仕上げてくれていた。夏の佐渡の地元パスタとしてはうってつけのメニューだった。
まめしょくどう・ハロン山
朝のさど納豆丼定食 1,000円

イエローエリアの小木商店街にあったのが、アース・セレブレーションの期間中のみ出店するというまめしょくどう・ハロン山。佐渡で「さど納豆」をつくっているまめやハロンと新潟市にあるヴィーガン料理店のmountain△groceryがコラボして食堂として店を開いている。ハーバーマーケットではなく、古民家を借りて営業しているのは、暑さから食材と自分の身体を保護するためだとmountain△groceryのyoyoさんは話してくれた。そういえば、アウトドアブランドのチャムスも、古民家を借りてポップアップストアとして出店していた。空き家になっている家も多そうだし、この歴史のある建物を、飲食に限らず物販やイベントスペースに活用していくのも今後の展開としてはいいかもしれない。

ハーバーマーケットがオープンするのが10時。ハロン山は朝8時からの営業。フェス初日にこの朝食メニューを見つけて、2日目(もしくは3日目)の朝は絶対にここだと決めていた。フェスで納豆の朝ごはんなんて、そんなにあるもんじゃない。

「さど納豆」は佐渡でつくられた豆を使っているという。小粒ではなく中粒程度の大きさ。納豆になっても、しっかりと豆の味がする。丼に入っていたのはツルムラサキ、紫蘇、なめ茸など。豆は煮豆。これだけでも美味しいのだけど、途中で納豆を追加して味変。味噌汁も佐渡のわかめを使うなど、「日本人でよかった」と納得してしまう朝食になった。昼には魚の炭火焼き定食も用意されていたから、来年はこの昼食もチェックしなきゃ。
旅する居酒屋ヤヘドン商店
イカ焼きネギワタソース 1,000円

金曜にマーケットゾーンをひと巡りしたときから、ヒットしていたのがここ。日中の暑さから解放され、涼しさも感じられる時間になってから、アルコールと共に味わいたいと思っていた。「旅する居酒屋」というフレーズも気に入っていた。

このヤヘドン商店ほど、イカにこだわったメニューが並んでいるフェス飯を見たことがなかった。イカガパオライス、イカ明太浅利うどん、イカ唐揚げ、イカリングフライ、イカメンチ……。街の居酒屋だって、こんなにイカのメニューが並ぶお店は少ないだろう。いくつもあるイカメニューのなかから選んだのが、イカ料理の王道中の王道と言っていいイカ焼き。
最終日の夕方になってやっとありついて実食。これが大正解だった。自分の好みの味にぴったりだった。醤油の匂いにそそられる屋台のイカ焼きではなく、イカワタをソースとして使った本格派のメニュー。そして焼かれたイカがレア状態。苦味もあるソースがイカの持つ甘さも引き立ててくれている。とにかく絶品で、アルコールのアテとしても最高だった。こんなイカ焼きを出してくれるのだから、他のイカ料理も間違いないのだろう。
佐渡のフェスではじめて出会った味たちは、いつまでも記憶に残っていくことは間違いない。
<text・photo=菊地 崇>
アース・セレブレーション2025
開催日:2025年8月22日(金)~24日(日)
会場:新潟県佐渡市小木
https://www.earthcelebration.jp/
かつては緑に囲まれた城山公園でメインコンサートが行われていたが、10年ほど前から小木みなと公園がメイン会場となっている。そのハーバーコンサートとハーバーマーケットがあるみなと公園近くがブルーエリア、フリンジと呼ばれる入場無料のフリーライブなどが行われる三角公園や小木の古い町並みが残る商店街エリアをイエローエリア、現在はキャンプサイトとなっている城山公園がグリーンエリア。コンサートやマーケットとともに、小木という重要伝統的建造物群保存地区に選定された小木の町全体が、アース・セレブレーションの会場として構成されている。
ハーバーマーケットも無料エリア。お客さんだけではなく、アース・セレブレーションに魅せられ、毎年のように続けて出店しているお店も多いという。ハーバーコンサートは毎日夕方18時から。それまではフリンジに行ったり、マーケットを覗いたり、町を歩いたり。このゆっくりした時間も、他のフェスにはないアース・セレブレーションの魅力なのだろう。フェス飯も、何を食べたいのかゆっくり選ぶことができた。
馬川亭×佐渡総合高校STACH
愛の佐渡タコス(ポーク)1,000円
ハーバーマーケットのフードエリアを歩いて、「これを最初に食べなきゃ」と思ったのがここ。看板から「愛」が伝わってくる。しかも実際に作っているのが佐渡の高校生たち。タコスの味がどうこうというよりも、夏を楽しみながら頑張ってタコスを作って売っている高校生たちの笑顔が見たかったのが、このタコスを選んだ大きな理由だ。

タコス生地は、ソフトでもハードでもなく、鉄板で自分たちで焼いもの。ひとつひとつが不恰好でちょっと硬めのものあるけれど、それがいい意味での忘れられないポイントでもある。サルサソースがもうちょっときいていた方が好みだったけど、佐渡の思い出としては最高の味との出会いだった。

caMococafé湖ASOBi
佐渡さーもんの塩レモンぱすた 1,000円
前に取材に行ったときに、佐渡の新しいブランド魚に「佐渡サーモン」があるということを知った。佐渡沖で養殖される国産のギンザケ(銀鮭)で、日本海の速くて深い潮流の中で鍛えられることによって引き締目られた身質と上品な脂が特徴だという。佐渡サーモンの旬は4月から6月まで刺身としても美味しく味わえるという。このお店では冷凍保存していると話してくれた。
佐渡とはいえ、残暑が厳しく日中の最高気温は35度近くまでなった。その暑さのなかで、「佐渡の美味しいを食べたい」と思って選んだのが、ここの塩レモンぱすた。佐渡サーモンは確かに柔らかくて、ほろほろとした食感だった。それを塩とレモンがさっぱりと仕上げてくれていた。夏の佐渡の地元パスタとしてはうってつけのメニューだった。

まめしょくどう・ハロン山
朝のさど納豆丼定食 1,000円
イエローエリアの小木商店街にあったのが、アース・セレブレーションの期間中のみ出店するというまめしょくどう・ハロン山。佐渡で「さど納豆」をつくっているまめやハロンと新潟市にあるヴィーガン料理店のmountain△groceryがコラボして食堂として店を開いている。ハーバーマーケットではなく、古民家を借りて営業しているのは、暑さから食材と自分の身体を保護するためだとmountain△groceryのyoyoさんは話してくれた。そういえば、アウトドアブランドのチャムスも、古民家を借りてポップアップストアとして出店していた。空き家になっている家も多そうだし、この歴史のある建物を、飲食に限らず物販やイベントスペースに活用していくのも今後の展開としてはいいかもしれない。
ハーバーマーケットがオープンするのが10時。ハロン山は朝8時からの営業。フェス初日にこの朝食メニューを見つけて、2日目(もしくは3日目)の朝は絶対にここだと決めていた。フェスで納豆の朝ごはんなんて、そんなにあるもんじゃない。
「さど納豆」は佐渡でつくられた豆を使っているという。小粒ではなく中粒程度の大きさ。納豆になっても、しっかりと豆の味がする。丼に入っていたのはツルムラサキ、紫蘇、なめ茸など。豆は煮豆。これだけでも美味しいのだけど、途中で納豆を追加して味変。味噌汁も佐渡のわかめを使うなど、「日本人でよかった」と納得してしまう朝食になった。昼には魚の炭火焼き定食も用意されていたから、来年はこの昼食もチェックしなきゃ。

旅する居酒屋ヤヘドン商店
イカ焼きネギワタソース 1,000円

金曜にマーケットゾーンをひと巡りしたときから、ヒットしていたのがここ。日中の暑さから解放され、涼しさも感じられる時間になってから、アルコールと共に味わいたいと思っていた。「旅する居酒屋」というフレーズも気に入っていた。
このヤヘドン商店ほど、イカにこだわったメニューが並んでいるフェス飯を見たことがなかった。イカガパオライス、イカ明太浅利うどん、イカ唐揚げ、イカリングフライ、イカメンチ……。街の居酒屋だって、こんなにイカのメニューが並ぶお店は少ないだろう。いくつもあるイカメニューのなかから選んだのが、イカ料理の王道中の王道と言っていいイカ焼き。


佐渡のフェスではじめて出会った味たちは、いつまでも記憶に残っていくことは間違いない。
<text・photo=菊地 崇>
アース・セレブレーション2025
開催日:2025年8月22日(金)~24日(日)
会場:新潟県佐渡市小木
https://www.earthcelebration.jp/