フェス飯クラブ / Fesmeshi Club

フジロックの縁の下の力持ち。フェス飯をおいしく食べられるのは、iPledgeの取り組みがあってこそ。

フジロックの縁の下の力持ち。フェス飯をおいしく食べられるのは、iPledgeの取り組みがあってこそ。


 フェス飯の“縁の下の力持ち”とでもいうべきか、フェスの参加者たちの目からは見えにくいところで大いなる活動を続けているチームがある。NPO法人のiPledgeという組織だ。おいしいごはんに冷たいビール! われらが使用した紙コップや紙皿、わりばしにフォークやスプーンといったカトラリーのほか、ペットボトルなどのごみ資源を有効活用し、主催者と共に次なる資源へと生まれ変わらせるための仕組みをつくり上げてきた。

 ふだんは何気なくポイッと捨ててしまうごみかもしれないが、ごみを捨てるという人間の行為を、当の本人に意識付けさせること、ごみへの関心を持ってもらうこと、そして自分も当事者であることをわかってもらうための社会活動が「Festival to your lifestyle」とういうスローガンに現れている。

「ごみゼロナビゲーション」という響きは耳にしたことがあると思う。フジロックに長年通っている人ならなおさらだと思うが、iPledgeの前進となるA SEED JAPANが主催者、タワーレコードとともに始めたこの活動自体は、いまや四半世紀を超えている。フジロックでごみゼロナビゲーションが実施されたのは、開催2年目の1998年のこと。その活動は、iPledgeが後を引き継ぐかたちでいまも続いている。

NPO iPledgeの代表、濱中聡史さん。2014年にiPledgeを立ち上げ、野外イベントでの環境対策事業を続けている。フジロックをはじめ、さまざまなフェスでのクリーンキャンペーンを実施。今回はフジロックの直前、代々木でのイベント現場におじゃまして話を伺いました!

 フジロックにあるごみゼロステーションは、単なるごみ捨て場ではない。来場者自身が主体となって、自分で分別してごみを捨てる学びの場でもある。この姿は、多くのメディアでも取り上げられるようになり、フジロックが「世界一クリーンなフェス」であると言われるようになった所以でもある。

 団体名のiPledgeとは、造語である。意味するところは、I(私)のPledge(誓い)。フジロックが掲げた「自分のことは自分で」「助け合い、譲り合い」「自然を敬う」といったマインドは、iPledgeが大切にしている社会の在り方でもある。

 具体的にどんなことをしているのかといえば、「ごみ資源の分別ナビゲート(来場者が主体となってごみの分別ができるようにナビゲートする)」「エコアクションキャンペーンブース(ごみ資源に関して、いまの現状を知ってもらうためのブースの展開)」「朝清掃(会場内のクリーンアップ作戦)」「ごみ袋の配布(リサイクルされたごみ袋を来場者に手渡す)」といった数々の行為である。

ごみステーションでは、ボランティアメンバーがごみを受け取ることはない。ごみを捨てに来た人自身がしっかりと自分で分別できるように、気持ちよく言葉でお手伝い

 また、会場で回収された紙コップは、次年度にフジロック会場で使われるトイレットペーパーにリサイクルされているが、そのオペレーションをつくっているのもiPledgeだ。このリサイクル活動は2006年から始められているが、聞くところによると、前夜祭を含めた4日間に回収される紙コップは、なんと800kgから1tもあるという。紙コップだけの専用の廃棄トラックを用意しての数字というだけに、かなり信頼のおける数だと思うが、ビールの紙コップがひとつ9g(編集部実測)とすれば、800kgで88,888杯分。1tなら111,111杯分である。1日換算にすれば、単純に4で割っても22,222杯か27,777杯。仮に1日の来場者が3万人であれば、どちらも1人1杯弱の計算となる。

たとえひとり1杯のビールを飲んだとしても、期間中にはこれだけの紙コップが消費されていることに。徹底したリサイクルを促すことで、来年度のトイレットペーパーへと生まれ変わっていく

 そう考えるとフジロック恐るべしの数字ではあるが、この回収された紙コップが、次年度用に用意される9,000ロールのトイレットペーパーに生まれ変わるという。このリサイクル事業は、フジロックに参加するすべての人たちが協力して成り立つものだ。iPledgeが旗振り役となって、フジロックへの協賛社をはじめ、さまざまな企業が絡んでいるが、来場者も主催者も関係企業もいっしょになったオール・フジロックでの活動だからこそ、こうやって維持されている。なるほど、フジロックがクリーンなフェスであると言われるのもわかるように思う。

 紙コップと同様に、昨年からは「ボトル to ボトル」というキャンペーンも始まっている。会場内で消費されたペットボトルは、ふたたびペットボトルへと生まれ変わるという動きである。このほかにもiPledgeとは別の枠であるが、フジロックの活動として、飲食出店の協力のもと環境にやさしい食器の使用を必須としていたり、食品ロスを減らすため、余った食材を湯沢町のフードバンクへ寄付していたりもする。まさに、さまざまな取り組みを生み出し、それを無理なく継続させている。これぞフジロックの本領発揮である。

さまざまな環境対策の文言が書かれたこの図表は、じつは、フジロックで配布されるごみ袋に印字されているもの。いままで、ちゃんとチェックできてたかな? 今年は、手にしたごみ袋をじっくりと読み込んでみて!!

 この活動を支えているのは、ボランティアメンバーであることも記しておきたい。年齢も職業も出身も含め、さまざまな背景をもつボランティアのみなさんが、自発的にこの活動を続けてくれている。今年のフジロックの4日間には、160人のボランティアが集まる予定だ。

 自分の頭で考え、行動する。これこそが、来場者も含めて共有したいiPledgeからのメッセージである。ビールで大いに盛り上がったあとは、しっかり分別。そこらへんにポイっとするような人は、フジロックにはいない(はず)。







FUJI ROCK FESTIVAL’25
日時:2025年7月25日(金)~27(日)
会場:新潟県湯沢町苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/