フェス飯クラブ / Fesmeshi Club

RAG FAIRの引地洋輔さんがLIVE AZUMAの運営スタッフを続ける理由。

RAG FAIRの引地洋輔さんがLIVE AZUMAの運営スタッフを続ける理由。

2001年にメジャーデビューしたアカペラボーカルグループのRAG FAIR。翌2002年にリリースされたセカンドシングル「恋のマイレージ」はチャート1位を獲得し、その年のNHK紅白歌合戦に出場を果たした。今年結成25年を迎え、2025年春まで「んふんふツアー」が開催されている。このRAG FAIRの1999年の結成からのメンバーであり、リーダーを務めているのが引地洋輔さんだ。

「田舎の高校生は、都会に憧れるんですよね。自分も卒業して都会に出ました。でも都会に出てみると、僕を育ててくれた福島っていう土地が、あまり知られていないっていうことに気づかされたんです。それがすごくショックで、自分のエゴもあるんですけど、福島のことを人にもっと知らせなくてはと思うようになったんです」と引地さん。

 2022年にスタートしたLIVE AZUMA。3年で東北を代表する秋フェスになったこのフェスで、引地さんは飲食などの出店を担当している。いわばフェスを成立させる裏方のスタッフ。会場内を自転車に乗って移動している姿を何度も見かけた。ステージに立つアーティストである引地さんが、なぜフェスの裏方も担っているのか。



「東日本震災後に、六本木ヒルズアリーナで『福島フェス』っていう無料のイベントが開催されていたんです。そのフェスの運営をしていたのが、福島の高校の同級生たち。最初はRAG FAIRへの出演依頼だったんですけど、タイミングが合わなくてライブはできなかったんです。だけど震災後の復興への思いが強くて、運営メンバーとして参加したいって伝えて。『福島フェス』は4年か5年続いたのかな。こういうイベントを福島でもやりたいねって話になり、福島で開催されることになったんです」

 そして引地さんはLIVE AZUMAの運営メンバーのひとりとなった。当初2020年に初開催される予定だったLIVE AZUMAは、コロナ禍によって開始が2年遅れた。

「2020年にLIVE AZUMAはできなかったんですけど、2021年にPARK LIFEっていう入場無料のイベントを開催したんです。どういう雰囲気になるのかやってみようっていうことになって。今でもLIVE AZUMAの無料エリアはPARK LIFE。チケットがなくても、気軽に来てもらいたいという思いもあるんです」



 PARK LIFEはマーケットとフードのエリア。AZUMA苑、イイオト食堂街、東北市場酒場、東北拉麺屋台村など、いくつものエリアがふたつのステージを結ぶように配置されている。フードの出店数は80近くを数える。それをまとめるのが引地さんの仕事だという。

「自分がフェスに行くと、やっぱりご当地感が欲しいっていうか、地元の味を味わって帰りたいって思うんです。フェス飯って、自分たちでは探し当てられなかったお店を紹介してもらえる場所でもあると思うから。だから、個人としてチャレンジしたり、美味しいものを出しているお店をここで紹介したいなって思いますね。福島に来ないと出会えない味」 

 引地さんが、実際にお店に行って出店を依頼することも少なくないという。それも、福島や東北の美味しいを知ってもらいたいという思いからに他ならない。



「福島の美味しいとともに、東北のいいものを集めましたっていう感じも作りたくて、毎年お声掛けさせてもらっています。福島らしいおもてなし、東北らしいおもてなしってなんだろうっていうのは、開催前からスタッフみんなで考えていました。人と人との交流もあるだろうし、地元の美味しいを味わってもらうこともそうだろうし。福島や東北の人と会って、話して、美味しいものを食べて、音楽を楽しんで。思い出を持ち帰ってもらって、そしてまた行きたいと思ってもらえたらうれしいですね。ありがたいことに、初年度から『ご飯が美味しかった』っていお客さんのコメントを数多くいただいています。食もLIVE AZUMAの売りになればいいなって」

 最後に引地さんのLIVE AZUMAのオススメのフェス飯を聞いてみた。

「秋の東北の味といえば、芋煮が一番に思い浮かぶと思います。毎年出店されている笑夢カレーさん。去年は出演したアーティストさんが『あのカレーはなんだ?』ってざわついたほどだったんですね。もちろん芋煮のような名物もオススメなのですけど、カレーのような『どこにでもあるメニューだけど美味い』っていうお店も、実は福島や東北にも数多くあるんです。そんな味にここで出会ってもらえればと思っています」


笑夢カレー/福島県産味噌スパイスキーマ+海老マサラカレー2種 1,200円



 非日常であるフェスという空間にもたらされる、食という地元の日常。その魅力をいかに伝えていくのか。

「開催直前までは、なんでこんな大変なことをやっているんだって毎年思いますよ。だけど終わって、スタッフや出店しているみなさんの笑顔を見ると、やっぱりここにいられてよかったなって思えるんです」

 LIVE AZUMAでは飲食出店の公募はしていないという。継続して出店しているお店もあれば、新規で入るお店もある。引地さんらが見つけた新しい味や新しいお店に、2025年のLIVE AZUMAで出会えるはずだ。


 






<text・photo=菊地 崇>


LIVE AZUMA2024
日時:2024年10月19日(土)、20日(日)
会場:福島あづま球場 あづま総合運動公園
https://liveazuma.jp